2020/03/23 20:18

 写真では伝えきれない感覚を伝えたい。実際に使ってみればすぐに分かって頂ける感じて頂けること、少なくとも展示会などで実際に手に取って頂ければ多くは感じて頂けるもの、それをショッピングサイトでどうしたら少しでもお伝えすることが出来だろうか。  そこで実際に一つひとつグラスを作る作り手=私自身の思い入れ、良い意味でのこだわりや作り方を書いてみようと思いました。

 私は主に「宙吹きガラス」という技法で作るわけですが、食器類を作る時、つまりいくつもいくつも同じものを作る場合、そのデザインを考える際にあるポイントを大切にしています。使いやすいとか洗いやすいとか、そういったことはもちろん考えますが、作り手としてのポイントに「ビシッと毎回同じようにはどうしても出来ない部分を作っておく」ようにしています。やっぱり作り手として一つのデザインを作る時、頭で考えた理想的な形というのはあるのです。そして一つひとつ毎回作るたびに、それを狙って作ります。作る個数の累計が増えてくると頭で考えた形にできあがる確率もドンドン増してゆきます。つまり上手になってゆきます。でも上手になってきてから作ったのと、そのデザインを作り始めた頃のと、どっちがいいか魅力的かというと、なかなかどっちとは言えません。失敗が少なくなるのは良いことです。作る時に目指す目標≒形のイデア(倫理社会という教科で習った・・)が無いと作りづらいです。作り手として常にイデアに近づけるよう頑張る、でもどうにもコントロールできない揺らぐ部分が存在する。そういう葛藤があるからこそ作り続けられるのだと思います。人間だから・・手慣れてしまって、よそ見をしてても完璧なものが出来てしまうと、作りてから見て完璧であってもどこかつまらないものになってしまう気がします。難しいところは技術的な未熟さからくる誤差を「手作りだから」と容認してしまう甘えも起こりうること、そこも自分自身で戒めるしかないところです。 

 吹きガラスは竿の先に巻き取ったガラスに息を吹き込んで形作る際、基本的には出来るだけバランスを崩さないように心がけます。バランスを保つことで均一に遠心力もかかり、そんなに手を加えることなく思った形にのびやかに膨らんでくれます。しかしこの「水たまりグラス」シリーズは、ガラスを巻き取った直後にコンプレッサーのエアーでガラスを歪めてしまいます。歪んでバランスを失ったガラスの扱いにくいこと!大きさを揃えるのも、口当たりをピンッと薄めに仕上げるのも、普通よりひと手間もふた手間も余計にてこずらせてくれます。でもこれが不規則で柔らかないびつさ”ゆらぎ”を生み出してくれます。ここがこのシリーズの「コントロールできない部分」です。

 プロダクトデザイナーの方が斬新で魅力的なデザインをして、それを作る工場やコスト~原価~流通~採算性まで考えて生まれるものもあります。それはそれできっと洗練されてて、買い求めやすく、人の目にも触れやすいでしょう。私の作るものはそういうものとは違う、、、もっと生身の「私」という人間が表れているような気がします。